迷路の掌中


 少し進むと、再びT字路があって、もう一度右に曲がった。更に進むと、またT字路だ。立ちはだかる壁、左右に分かれる道。
 さっきからT字路が、全部同じに見える。迷路なのだから、同じに見えるように作られていてもおかしくはないが、それ以上のなにかがあった。曲がったすぐ先に、同じ分かれ道があるような、そんな感覚。壁が塞いでいる。道を塞いでいる。
 今度は左へ。
 今度は右へ。
 どちらへ行こうと、待っているのはひたすらに壁だけで。壁が追い詰める。壁に追い詰められる。どうしようもなくなって、どうにもならなくなって。
 きびすを返して、真っ直ぐに走った。
 曲がり角も分かれ道もない道を、真っ直ぐに真っ直ぐに走った。

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